ちてはこ菓子店

私たちは「タルト」をどのように売れば良いか考えあぐねていました。私たちのお店は奈良の市街地にあるとはいえ、駅からは徒歩18分。お客様が歩いて来るには少し遠すぎます。本来はこういう店には近隣に駐車場があるものですが、あいにくすぐ近くには駐車場を確保できず徒歩4分ほど離れた場所にようやく3台ほどの駐車スペースを確保していました。お店の前は車が2台すれ違うのも難しい細い道しかありません。

そんな中で「駅ナカ」での販売に思い至り、最初は公共交通沿線での駅ナカ催事出店は出来ないかを探り始めました。催事出店場所が近くの沿線に存在することを知って思い切って飛び込みでメールでの問い合わせを試みました。幸運なことに無名の私たちに担当部署から連絡をいただき会っていただけることになりました。

2018年、はじめて担当者とお会いして全くの素人の私たちにこと細やかにいろいろなことを教えていただきました。でも決定的な問題があることもそのことでわかりました。駅ナカのPOP UP SHOPでは私たちの予想を上回る売上が可能でしたが、私たちの実力ではそれだけの商品を生産することが出来ません。でもそのことが分かったおかげで、私たちの次の目標は今よりも何倍も生産性を上げることとなりました。

私たちはまず設備投資を行う必要がありました。資金のストックがない私たちは設備投資を行うために「小規模事業者持続化補助金」という補助金を獲得するために動き始めました。補助金の申請についてもはじめての経験で戸惑っている時に「よろず支援拠点」の存在を知りました。「よろず支援拠点」は実は中小企業庁直轄の組織で経営に関する相談なら何度利用しても無料で相談が受けられます。各都道府県に必ず存在し、よく分からないコンサルティング会社に高額な費用を払うよりもよっぽど頼りになります。十数名のコーディネーターと呼ばれる相談員が待機していて、それぞれが企業や公共の場で専門分野で活躍してきた人たちで、相談内容に応じて親身に寄り添ってくれます。

よろず支援拠点には今でもお世話になっています。はじめての持続化補助金の申請はなんとか採択され、無事に私たちは業務用のオーブンを手に入れ、またお店の広報宣伝費を手にすることが出来ました。

同時に最初に面談していた沿線とは別の沿線での駅ナカ催事の話がまとまりつつありました。そして私たちは新型コロナウイルスが蔓延を始める直前、2020年5月に「ちてはこ菓子店」をリニューアルオープンさせ、その年の秋駅ナカでの催事出店を始めることが出来たのでした。

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