私の実家ではなぜか家長が毎年年末になるとおせちの用意をはじめます。
父が料理人だったからでしょうか?母も煮しめなどは作っていたように思うのですが、家内の家でもお父さんがお惣菜店をしていたこともあってこちらは仕事で家族総出でおせちを作って盛り付けていたそうです。私(旦那)の方はお惣菜店ではないのにまるで売るかのように膨大な量のお節を作っていました。テーブルの上に所狭しと重箱が並びます。半分以上はご近所の世話になった方々の元へ送られます。
そんな光景を毎年のように見ていた私はいつの間にか自分の家でも年末におせちを仕込むようになりました。
我が家のおせちは伝統的な日本のおせちとは違っています。父が洋食のコックだったこともあり、とにかく「美味しいものはなんでも詰め込め」と言った風情のお節でした。お煮しめはごくありふれています。唯一黒豆はやはり料理人の家内のお父さんが炊いたものをいただきます。通常のお節と違っているのはまず「海老肉団子」(中華)春雨の春巻き(中華)松風(和風)鳥の唐揚げ(中華)うまき(和風)ビーフシチュー(洋風)が基本で、あとは気まぐれになますを入れたり、サラダを入れたり。年によって少しずつ中身が変わります。もちろん焼き物で鰤の照り焼きや鳥を焼いたりもします。
我が家では雑煮は関西風の白味噌の雑煮ですが、味噌は大阪の住吉区の住吉大社の近くにある「池田屋」の白味噌を使っています。自然な甘みとコクの強い白味噌です。元日の朝は雑煮に丸餅を焼かずに入れ、御重に詰めたお節を味わって新年を祝います。
以前は実家で餅つきをしたのですが最近は母も老いたので重労働の餅つきをしなくなりました。
父が存命だった頃は餅つきをしながらお節を仕込むのが毎年の新年を迎える準備の儀式のようなものでした。私もお重を詰めるのを手伝っていましたし、よく考えると当時知り合っていなかった家内も実家で同じようなことをしていたことになります。偶然そういう良く似た家に生まれ育ったことが私たちには案外良かったのかも知れません。
年末にはまだ1ヶ月以上ありますが、年末に値上がりする材料で日持ちのするものや魚や肉類は11月中に買っておいて冷凍しておきます。ビーフシチュー用の頬肉やうなぎを買い始めると私の中ではもう年末の準備に入りはじめたことになります。
私たちはお菓子屋なので今はクリスマスに向けておおわらわですが、正月三が日はきちんと休みを取って新年からバレンタインまでを乗り切る英気を養います。お節料理が日持ちするものが多いのは年中休みのない主婦がゆっくり正月を迎えられるための工夫なんだろうな、といつも考えながら「今年は何を詰めようか?」ともうすでに年末のことを考えはじめています。