ちてはこ菓子店

私たちが開店したカフェの近くに「Panc(パンク)」というパン屋さんが開店しました。  私たちはハード系のパンがとても好きでしたが、近隣には菓子パン屋さんが多くて、そんな中でPancさんは菓子パンに混ざってハード系の本格的なパンを作っていました。そんな中で特に気に入ったのはチャバタというオリーブオイルを練りこんだパンでした。  香ばしくて外側はパリットして中はふっくら。頬張ると香ばしい香りに混じってオリーブオイルの香りがプウンと鼻をくすぐります。  開店当初はおかずにご飯、糀味噌と小皿の「ごはんどき」という定食を出していたのですが、女性客の多い当店でもう少し軽めの食事を出せないか?と考えていたところでした。  私たちはこのパンと出会い「チャバタ」を使ったサンドイッチはできないかと考え始めました。  牛肉では主張すぎるし、ハムでは香りの強いチャバタに負けてしまう。  食材卸店で豚のロース肉を見つけ、ローストポークを作ってみることにしました。
味付けはシンプルに。  その頃私たちのカフェの庭には大きなローズマリーの木がありました。  これを香り漬けに使えないだろうかと頭をよぎりました。  庭に出てローズマリーの枝を切るとそれだけで全身に香りがまとわりつくほどでした)。 (実はこの三年後にはローズマリーの巨木は突然枯れてしましました)  庭から取ってきたローズマリーの葉を細かく刻んで大量の塩に混ぜ込みました。  買ってきた豚のロースの塊にまず粗挽き胡椒を擦り込んで、続いてローズマリーを混ぜた塩を刷り込みます。  これをラップでしっかり包みパットにのせてそのまま一晩冷蔵庫で寝かせます。  翌日、ラップを外し、表面いついた塩を手で軽く払い落とします。  これをオーブンに入れて150~180℃のオーブンでまず二十分焼きます。  二十分経ったら肉を裏返しもう一度十五分焼き込んで、オーブンの日を落とし、そのままオーブンの中で3時間ほど余熱で蒸らします。
焼き上がったローストポークにラップをかけてを冷蔵庫で冷やして翌日落ち着いたら包丁で切り分けます。  余熱で焼き上げることで肉の柔らかさが保たれ舌触りのなめらかな肉汁たっぷりのローストポークが焼き上がります。

冷蔵庫で冷やすことで肉の中のコラーゲンが固まり肉が引き締まって切り分けやすくなります。  このようにして焼き上げたローストポークはとても美味しくて、焼き上げた日には商品にならない端っこを集めてサラダに混ぜたり、マスタードをつけたりレモンを絞ったりして美味しくいただきます。生ハムの塩気が合うように果実などと合わせても美味しくいただけます。  冷えたローストポークは三ミリ程度の厚さで切り分けてタッパなどで保存しておきます。長期間保存する場合はスライスを一枚ずつ丁寧にラップで包んで冷凍します。手を抜いてまとめて保存しておくと水分が抜けてみずみずしさが損なわれるので気をつけてください。  「Panc」さんには市販の大きさのものより三割ほどサンド用に少し小さめのパンを特注で焼いていただいていました。
焼きたてのうちにこのパンを丸ごと横に二枚にスライスし、しっかり冷凍保存したものを調理する直前に解凍してトースターで少し焼いて使っていました。またスライスしたローストポークもほんの少し暖かくなる程度に温めておきます。  具材は基本サニーレタスとローストポークのみで味付けは必要ありませんでした。ポークに染み込んだ塩気だけで十分に美味しかったからです。  頬張るとローズマリーとオリーブオイルの香りが口いっぱいに広がります。  「ローストポークのチャバタサンド」は閉店するまで私たちの店の人気メニューとなりました。現在は厨房には料理用のオーブンがありませんが、代わりにタルトの甘い匂いが部屋いっぱいに広がっています。  かなりボリュームがあるので女性のお客様はどうかなと思いましたが、みなさんペロリと完食されていました。  オリーブオイル、塩胡椒、肉、ハードパン、野菜でバランスも良く、王道のおいしさだったと思います。  シンプルなものはおいしい。  その原点がここにあるように感じます。

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